指先の滑り覚の力学的解析

皮膚における触覚受容器の配置が触覚に与える影響を解析するために,3次元モデルの断面から指先の2次元力学モデルを構築した(図4).モデルの次元を減らしたのは,計算時間を短縮するためである.一方,皮膚を表皮と真皮に分割するとともに,表皮と真皮の境界面のマイクロ構造を導入した.さらに,触覚受容器のFA-I, FA-II, SA-I, SA-IIを指モデルの内部に配置した.

構築した二次元モデルが表面に接触し,その上を滑るダイナミックシミュレーションを実施した.力学シミュレーションの結果,受容器FA-IとSA-Iの場所で,初期滑りの瞬間に加速度が生じることがわかった(図5).一方,滑りの検出に有効であると言われている触覚受容器における歪みエネルギー密度を計算した結果,歪みエネルギー密度を用いて初期滑りを検出することは困難であることがわかった(図6).また,末節骨の形状が,初期滑りの瞬間に生じる加速度に影響すること,指紋を導入すると加速度信号にノイズが発生し,滑りの検出が困難であることがわかった.

図4 指先の二次元モデル
図5 FA-IとSA-Iにおける加速度
図6 FA-IとSA-Iにおける歪みエネルギー密度

研究発表

指先の力学モデリングと滑り覚の力学的解析
初期滑りの提示
生体モデリング